・Göran Månsson ヨーラン・モンソン (スウェーディッシュ・フルート)
・Martin von Schmalensee マッティン・ヴォン・シュマレンシー (ギター、コントラバス)
・Patrik Kallstrom パートリック・シャルストローム (フィドル、ハーモニカ)
・Karin Nakagawa 中川 果林 (25弦箏)
・デュオ シストラミ Duo Systrami
Fanny Källström ファニー・シャルストローム (フィドル)
Klara Källström クララ・シャルストローム (チェロ)
ー 伝説のスウェーデンの笛奏者 Olofの生誕を祝い、日本の楽器と共に蘇る年 ー
スウェーデン中部Härjedalen出身の笛奏者Olof Jönsson (1867-1953) [ Ol'Jansa とも呼ばれる]。 彼は、フォークミュージックの他の笛奏者がそうであった(※1)ように自分の楽しみのためにHärjedalspipan を使用していた。 Olof や彼の音楽はとてもエキゾチックでエキサイティングであったと理解されるべきで、そのためスウェーデンのラジオ局は彼の曲を1935年から1951年の間、3度に渡り録音した。
Göran MånssonはOlof Jönssonの音楽に刺激を受け、2017年春、Emma Ahlberg Ek、 Patrik Källström、中川果林、そしてMartin von Schmalensee と共に新しいアルバムを制作する。 古い楽譜や音の記録をもとにOlofの曲を新しい解釈でレコーディングするよう政府機関であるSvenskt visarkiv と国営レコード会社であるCaprice Recordsから依頼を受けたGöranはまず彼と 彼の曲に関する記録を求めSvenskt visarkivへ向かう。
そこには楽譜の他、スウェーデンのラジオ局が録音した膨大な記録がありGöran はまずそれらすべてを読み、聞くことにした。当時のスウェーデンラジオ局は、田舎に住む人々によって自分たちの楽しみのために演奏される フォークミュージックが記録されないままに消えてしまわないよう地方を巡っては録音をしていた。
その中で彼らはOlofを見つけ彼の演奏を録音したのだか、私たちが想像するような「レコーディング」とは違い Olofの自宅のキッチンで録音されたもので、ストックホルムから来た若いインタビュアーと田舎に住む年老いたOlofの 奇妙なやりとり、曲を演奏する途中で「あれ?この後どうだったかな?」と一旦演奏をやめ思い出してから吹きはじめるときもあれば、そのまましばらく話してから思い出したように 演奏を再開したりする様子、既に年老いていたOlofは長く息が続かなかったので演奏の途中で度々息を吸うために間があき、そのため曲のメロディやテンポが解りづらくなって いたり…。
そういったものがすべて録音されているプライベートな雰囲気の「レコーディング」であったため、その量は膨大であった。それらすべてを再確認し、選び取る作業はなか なか大変なものであったが同時に楽しい作業でもあった。このようにして見つかった曲から刺激を受けた様々なジャンルのミュージシャンによって今回Olof Jönssonの音楽が新 しくなった。 これは多様なスタイルから影響を受け伝統の中から新しい音楽をつくり、楽器やこの地域に対する新しいアイデンティティを与えるという境界線を越えた協力である。
ロック、フォークミュージック、クラシック、ジャズ出身のミュージシャンの手によって古いOl'Jansa の曲が新しい解釈の下でレコーディングされたことにより、私たちは日本の琴とスウェーデン のHärjedalspipan が出会うのを聞くことができる。2018年、日本とスウェーデンが国交を成立してから150年を迎える。
150年前、それはOlofが生まれた時期と重なる。両国の革新的な方法とOlofの遺した曲への大きな尊敬と敬意によってこのアルバムで両国の音楽と伝統楽器が出会う。
Göran Månssonは2017年と2018年に両国において仲間のミュージシャンと共にツアーを行う。
取材・翻訳協力:元永 康子 Yasuko Motonaga
(※1:フォークシーンにおいて、フィドルは地域の行事で演奏されたりと活躍している楽器で、この当時にも、地域で名の知れたフィドラーなどはいたと思うのですが、それに対し、笛には公的な演奏の場は通常ありませんでしたし、 笛吹きという職業も当然ありませんでした。笛はあくまで農作業等の休憩時間に吹くような余暇の楽器であった。)
本国で大変注目されているプロジェクト