ライアとは、二つのアームとそれに横木が本体から水平に突出してついている弦楽器である。 弦は、底または全面にある緒止板から横木にかけて張ってある。ほとんどのライアは爪弾くものであるが、いくつかのライアは弓で弾く。 ボックスライアは木製の共鳴板で木で出来た箱のような本体からなる。
古代ギリシャのキタラのように、アームがボディの空洞の間に伸びている例もいくつかある。 ボウルライアは、丸くカーブを描いた背面(時にべっこうでできている)を持ち、皮革の腹面をもつものである。 ギリシャのライアのようにアームは常に離れて作られた。 シュメールのライアは木のくさびで調弦を行った。
ライアは古代ギリシャの知恵と節度の象徴であった。ギリシャのライアはライアとキタラの2つに分かれる。 キタラはアジア起源といわれており、ライアはギリシャまたはシリアのどちらかが起源であるとされている。 ヨーロッパの爪弾きのライアは側面がまっすぐなものと、くびれているものに分別される。 本体、アームそして横木が同一の木からつくられているということが多い。 文献によると、ケルト人はライアをcrwth, cruit, crotと呼び、英語またフランス語ではrote、ドイツ語ではrotteと名づけられた。
弓の使用はおそらく紀元700年代あたりに中央アジアで発明された。 音楽的な弓は、ビザンツとイスラムの両方を通り、南スペインを経由するルートで伝わっていった。 最も古い弓の形跡があるのは、2世紀初頭のスペインである。 12世紀までには、弓を使ったライアの演奏法は西ヨーロッパ全土において一般的なものになっていた。 ウェールズのcrwthは13世紀までには、横木からサウンドボックスにかけて指板が設置されており、19世紀まで演奏されていた。 弓弾きのライアは今でも、生きる伝統として幾人かの演奏家と70年代に始まった復刻によってフィンランド、エストニアそしてスウェーデンで演奏されている。
弓で弾くライアもライアと同じ系統の弦楽器である。 ライアはかつてヨーロッパ中で広く使われており、その伝統は今でも、特に、フィンランドの東カレリアとサヴォ地域、 またエストニアのスウェーデン語が話されている地域で生き続けている。
ヨーヒッコ奏者はたいてい、楽器を斜めに持ち膝のあいだで支えながら、楽器の右のアームを親指で持って弦を指の背か拳骨で押さえる。 1つか2つの弦が低音で、メロディーの下の音を奏でる。ヨーヒッコの弦は伝統的に馬の毛から出来ている。 これらの特徴は、大いに中世を追憶させる。 スカンジナビアで最も古い痕跡は、ヨーヒッコ奏者がノルウェーのTrondheim Cathedralの14世紀初めの日付と共に石に彫られたものである。
弓弾きのライアの現地における名称は、フィンランドでは、Jouhikannel, jouhikko またはjouhikasである。 エストニアのエストニア系スウェーデン人はこの楽器をtalharpa 、エストニア語ではHiiukannelと呼ぶ。 フィンランドにおける唯一のヨーヒッコの使用に関する情報は、東部のカレリアとサヴォ地方から発信されている。 ヨーヒッコという名前は弓(jousi)を使い演奏することから引用されている。ヨーヒッコはかつて、歌とダンスの伴奏を行うものであった。 ダンスはそもそも本質的に即興である。演奏家はダンサーが踊り続ける限り、時には数時間または1日をもまたいで演奏を行った。
1916年、民俗学者であるA.O.Vaaisaanenはカレリアにてカンテレとヨーヒッコの曲を収集することを開始した。 彼はたった一人、まだ壊れていない伝統を知る漁師のFeodor Pratshuを見つ出すことが出来たため、この収集は急を要するものとなった。
エストニアの弓弾きライアは、手を入れる広めの穴があり、2~4つの弦を持つタイプである。 弓弾きライアは13世紀の終わりにスウェーデンとフィンランドからの移民によってエストニアに持ち込まれた。 この楽器はtalharpaやtallharpaまたはharpaという名前で知られている。 エストニア系スウェーデン人はtalharpa を民族を代表する楽器とみており、結婚式でのダンス音楽にかかせない大きな役割を担っていた。 Talharpaを演奏するということは全ての若い男性の間の必須なスキルであった。
1970年代のスウェーデンでStyrbjorn Bergeltが、弓弾きのライアやその他の古代の楽器の演奏と研究を始めたことから再評価・復活の機運が高まり、 フィンランド、エストニア、ロシアのカレリア地方でも同様な現象がおきる。
ヨーヒッコの演奏の復活は、現代にあう新しい音楽の創作、新しい演奏スタイルやパフォーマンスを生み発展を続けている。 弓弾きのライアも、ダンスのリズム、ライブパフォーマンスを行う楽器にまで発展し、他の民族楽器と同じ道をたどっている。